「観るだけ」のスポーツは終わり!?世界を熱狂させるスポーツベッティング
これまでのスポーツ観戦は、試合の結果を見届ける受動的な行為でした。
その流れに近年、変革が起きています。その中心にあるのが、スポーツベッティングです。
スポーツベッティングとは、プロスポーツの試合結果や特定の事象に対して金銭を賭ける行為です。
日本では公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)やスポーツ振興くじ(toto/WINNER)といった限定的な形でのみ合法化されていますが、世界では巨大なエンターテインメント産業として確立されています。
この世界的な潮流は、スポーツの楽しみ方を根底から変え、観戦者と競技との結びつきを強めています。
試合の勝敗だけでなく、誰が最初に得点するか、何本のシュートが放たれるかといった詳細なデータにまで意識が向き、観戦の没入感は飛躍的に高まります。
しかし、この巨大な市場の裏側には、無視できないリスクと、日本における解禁を巡る様々な議論が存在します。
このコラムでは、スポーツベッティングの基本的な説明から、海外の事例、巨大な市場規模、そして日本が直面する課題と将来の展望について、考えていきます。
巨大な市場規模
世界市場の現状と予測
オンラインスポーツベッティング市場は、近年驚異的な成長を遂げています。調査会社の予測によれば、世界のオンラインスポーツベッティング市場は、2025年には約481億7000万米ドルに達し、その後も年平均成長率11%から13%で成長を続け、2030年までには1873億9000万米ドルに達すると見込まれています 。
この成長の背景には、スマートフォンの普及によるアクセスの容易化、そして合法化を進める国や地域の増加があります。

(引用元:https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/sports-betting-market)

合法化が進む中で、最も深刻なリスクとして浮上しているのが、試合の公正性の確保です。
この巨大な市場は、単なるギャンブル産業の拡大に留まりません。
ベッティング事業から得られる収益は、税収として国家財政に貢献するほか、スポーツ振興のための財源として活用されます。
日本での違法市場
日本国内では、公営競技を除きスポーツベッティングは原則違法ですが、海外のオンラインブックメーカーを利用した違法市場が急速に拡大しています。ある調査では、2024年における日本居住者による日本のスポーツを対象とした年間賭け金総額は、約6.5兆円にも上ると推計されています。
この6.5兆円という数字は、日本国内で合法的に運営されている公営競技の市場規模に匹敵する、あるいはそれを上回る規模であり、巨大な潜在市場が水面下に存在していることを示しています。
この資金が海外に流出し、税収やスポーツ振興に還元されていない現状は、日本経済にとって大きな機会損失であると言えます。
スポーツベッティングの合法化は、違法市場の縮小とともに、スタジアム建設や若手育成などのスポーツ振興費を確保する手段として期待されています。
海外での成功
アメリカの事例
アメリカでは、2018年に連邦最高裁判所が、州によるスポーツベッティング禁止を定めた連邦法を違憲とする判決を下したことで、各州で従来禁止されていたスポーツベッティングが合法化され始めています。特にニュージャージー州やラスベガスのあるネバダ州ではオンライン上を中心にスポーツベッティング市場が急速に拡大しています。

引用元:https://www.bookmakersreview.com/usa/
この合法化の波は、プロスポーツリーグにも大きな変化をもたらしました。
かつてはギャンブルとの関連を避けていたNBAやNFLといった主要リーグが、ベッティング企業と公式パートナーシップを結び、収益源の一つとして積極的に活用しています。
これは、ベッティングがスポーツの没入体験を高め、ファンベースを拡大する効果があると認識されたためです。
イギリスの事例
一方、イギリスはスポーツベッティングの歴史が長く、1960年代から合法的に行われていました。ブックメーカーと呼ばれる業者が街中に存在し、オンラインベッティングも広く普及しています。サッカーやテニス、競馬など幅広い競技が対象となっています。
2016年に岡崎選手も所属するレスター・シティーがプレミアリーグを初優勝した際には、オッズが5001倍になっていたことでも話題になりました。

(引用元:https://cyclestyle.net/article/2016/06/16/37189.html)
イギリスでは厳しい本人確認や広告規制などを基準としたライセンス制度を取り入れ、スポーツベッティングを合法的に楽しめる環境整備が進んでいます。
イギリスでは厳しい本人確認や広告規制などを基準としたライセンス制度を取り入れ、スポーツベッティングを合法的に楽しめる環境整備が進んでいます。
スポーツベッティングの課題
負の側面:インテグリティへの脅威
2024年には、NBAの選手が自身の試合に関する賭けに関与したとして永久追放されるという不正賭博事件が発生しました。
これは、ベッティングが合法化された環境下でも、選手や関係者による八百長やインサイダー情報の利用といった不正行為の誘惑が常にあることを示しています。
このような八百長や不正行為はスポーツインテグリティを脅かすとして、厳しい処罰が行われます。
このような八百長や不正行為はスポーツインテグリティを脅かすとして、厳しい処罰が行われます。
インテグリティとは、誠実性・健全性・高潔性の確保を指し、スポーツ本来の価値を維持する必須要素として重要視されています。
スポーツベッティングの健全な発展には、試合の公正性をいかに守るかが不可欠です。
海外では、専門の監視機関がベッティングデータをリアルタイムで分析し、不自然な賭けのパターンを検出するシステムが導入されています。
ギャンブルへの悪いイメージ
また、日本社会には、ギャンブルに対して悪であるという倫理的な抵抗感が存在します。
これは、過去の歴史的経緯や、ギャンブル依存症の問題が社会的に認知されていることに起因します。
特に、スポーツは教育的な側面や青少年の健全育成という役割も担っているため、スポーツとギャンブルを結びつけることへの抵抗は強く、スポーツ団体や教育関係者からの反対意見も少なくありません。
このイメージを払拭し、スポーツベッティングを社会に受け入れてもらうためには、収益の透明性、厳格な規制、そして何よりも依存症対策への徹底した取り組みが不可欠となります。
特に、スポーツは教育的な側面や青少年の健全育成という役割も担っているため、スポーツとギャンブルを結びつけることへの抵抗は強く、スポーツ団体や教育関係者からの反対意見も少なくありません。
このイメージを払拭し、スポーツベッティングを社会に受け入れてもらうためには、収益の透明性、厳格な規制、そして何よりも依存症対策への徹底した取り組みが不可欠となります。
日本での取り組み
WINNERの登場
従来スポーツくじはサッカーの試合を対象に、複数試合の勝敗をまとめて予想する形式のtotoやBIGに限定されていました。


しかし2022年に転換点が訪れ、「WINNER」というスポーツくじの発売が開始されました。
「WINNER」の最大の特徴は、1試合単位での予想を可能にした点にあります。
この1試合予想という形式は、海外のスポーツベッティングのシングルベットに極めて近いものであり、日本の法制度下で実現した画期的な試みと言えます。
ファンは自分の応援するチームの試合に特化して購入できるため、より強い没入感と関心を持って試合に臨むことができます。

また、対象となる競技がJリーグに加え、Bリーグも追加されたため、規模の拡大が起きています。購入者は、試合の得点差も含む最終的なスコアを予想し、1口200円で購入します。
収益の分配
「WINNER」は、収益の分配構造が定められていることが、日本のスポーツ振興における重要なポイントです。
売上金の50パーセントが払戻金として当選者に支払われます。これは海外のブックメーカーの還元率に比べ低い水準にあります。
「WINNER」が純粋なギャンブルではなく、スポーツ振興を目的とした「くじ」であるという法的・制度的な位置づけを反映しています。
売上金から、払戻金と運営経費を引いた収益のうち、3分の1が国庫に納入され、残りはスポーツ振興のための助成金として活用されています。
注目すべきは、売上の一部が、くじの対象となったクラブに直接還元される仕組みが導入されている点です。

引用元:https://www.paypay-bank.co.jp/sports/winner.html
これにより、ファンはくじを購入することが、自分の応援するクラブへの直接的な支援になるという動機付けを得ることができ、ファンエンゲージメントの向上に大きく貢献しています。
依存リスク
ギャンブル依存症は、ベッティングが合法化された国々で共通する深刻な社会問題となっています。
特に、オンラインベッティングは24時間いつでもどこでもアクセス可能であるため、依存症のリスクを高める可能性があります。日本がスポーツベッティングを解禁する場合も、対策は必須です。
賭け金の上限設定、時間制限、一定期間の自己排除機能の義務化を求める自己規制ツールの導入や、未成年者への露出を防ぐための広告時間や内容の制限、依存症患者とその家族を支援するための公的な治療機関や相談窓口の拡充などがあげられます。
これらの対策は、市場の健全性を保ち、スポーツベッティングをエンターテインメントとして維持するための土台となります。
これらの対策は、市場の健全性を保ち、スポーツベッティングをエンターテインメントとして維持するための土台となります。
まとめ
このコラムで見てきた通り、スポーツベッティングは、単なるギャンブルではなく、スポーツの価値を最大化し、ファン体験の没入感を深めるための強力なツールとなり得ます。巨大な市場規模が示すように、その経済的ポテンシャルは計り知れません。
しかし、日本がこの潮流に乗るためには、感情論や倫理的な抵抗感を乗り越え、現実的なリスク管理の枠組みを構築する必要があります。
しかし、日本がこの潮流に乗るためには、感情論や倫理的な抵抗感を乗り越え、現実的なリスク管理の枠組みを構築する必要があります。
WINNERの登場をはじめ、日本でも段階的なスポーツベッティング解禁への取り組みが始まっています。
スポーツ界のさらなる発展にスポーツベッティングが寄与する未来は近いかもしれません。
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