日米の枠を超えて。世界各地で芽吹く「野球文化」の現在地
かつてお茶の間を熱狂させた長嶋茂雄から、今や世界の至宝となった大谷翔平まで。
日本においてプロ野球は、時代を象徴するスターたちの系譜とともに、テレビ中継や日々のニュースを通じて身近なスポーツであり続けてきました。
しかし、その熱狂の裏で、野球は日米だけのスポーツという指摘がされてきました。
欧州で静かに広がる熱狂、アジアに輸出される「甲子園文化」、そしてアフリカからNPBの門を叩く新星の登場。
「日米だけのスポーツ」というイメージを打ち破り、グローバルスポーツへと進化を遂げようとする野球界の普及活動と、その挑戦の成果を紐解きます。
野球ってグローバルスポーツなの??
侍ジャパンの活躍
大谷翔平選手の大活躍もあって、侍ジャパンが優勝を果たした2023年のWBCから早3年。今年の3月には再びWBCが開催されます。前回大会は、大谷選手の参加により開幕前から注目度が高く、日本中が熱狂の渦に巻き込まれました。

引用元:https://japan-baseball.jp/jp/games/wbc2023/
しかし、侍ジャパンの活躍がニュースで取り上げられるたびに、SNSなどではある論争が巻き起こります。
「野球って日本とアメリカだけじゃない?」「サッカーの方が世界で広まってるでしょ」
皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
WBCとW杯
数字だけを見れば、その意見はもっともです。2026年のFIFAワールドカップは、本大会出場国がこれまでの32カ国から48カ国へと大幅に拡大され、予選にはFIFAに加盟するほぼ全ての211の国と地域が参加します。
一方、WBC本大会の出場国は20カ国、予選を含めても28カ国程度です。
この数字の差は歴然であり、野球が世界に広がるスポーツと言えるかは議論の余地がありそうです。
野球は、特定の地域で深く愛され、文化として根付いているスポーツから、今まさに世界へとその裾野を広げようとしているのです。
WBCは、その広がりを象徴する舞台であり、新たな野球の魅力を世界に発信しています。
欧州で広がる野球人気
チェコと野球??
2023年のWBCで日本と対戦し、多くの野球ファンの心を掴んだチェコ代表の活躍は記憶に新しいでしょう。
引用元:https://www.nikkansports.com/baseball/samurai/wbc2023/photonews/photonews_nsInc_202303110002071-3.html
彼らの多くはプロ野球選手ではなく、普段は消防士や教師といった別の仕事を持つ野球を愛するアマチュア選手たちでした。そのひたむきなプレーは、世界中に感動を与え、チェコ国内での野球人気を飛躍的に高めるきっかけとなりました。
NPBでも千葉ロッテでは「チェコ ベースボール デー」と銘打ち、チェコ代表のコーチを招いたイベントを実施したり、読売ジャイアンツにチェコ人のマレク・フルプ選手が入団したりするなど、結びつきを深めています。
MLBの取り組み
この欧州における野球人気の高まりは、チェコだけに留まりません。近年、MLBではロンドン・シリーズと題して、MLB公式戦のイギリス開催を行う等、欧州全体での野球人気の高まりを画策しています。

引用元:https://www.mlb.com/cardinals/news/mlb-2023-london-series-hall-of-fame-artifacts
ドイツ出身のマックス・ケプラー選手のような欧州出身選手もMLBで活躍を見せています。
さらに、日本のプロ野球界からも、昨シーズン限りで千葉ロッテマリーンズを退団した荻野貴司選手が、2026年からチェコリーグの「ドラツィ・ブルノ」へ移籍するというニュースは、大きな話題となりました。
荻野選手の挑戦は、単なる移籍に留まらず、日本の野球文化を欧州に伝える役割も期待されます。
このように、欧州では着実に野球の存在感が増しており、その熱は密かに広がりを見せているのです。
アジアで広がる日本の野球文化
アジア甲子園??
「日本の甲子園ブランドをアジアに輸出する」をコンセプトに掲げる、アジア甲子園はその代表的な例です。
引用元:https://event.nbacademy.jp/asiakoshien2025
このプロジェクトは、単に野球の技術を教えるだけでなく、日本の高校野球が持つ礼儀、全力疾走、チームワーク、といった精神性や教育的価値をアジアの若者たちに伝えることを目指しています。
多数の大手企業が理念に共感し、スポンサーとして事業を支える等、今後も事業の拡大が見込まれます。
王貞治氏や工藤公康氏も、後援者として名を連ねるなど、野球界のレジェンドたちからも期待されています。
アジア甲子園2025
2025年12月には、インドネシアのジャカルタで第2回アジア甲子園大会が開催されました。
この大会には、地元インドネシアに加え、フィリピン、マレーシア、シンガポールから計14チームが参加し、熱戦を繰り広げました。
結果として、ジャカルタ代表の「Cheetahs」が大会連覇を達成し、アジアにおける野球のレベルアップと普及に貢献しました。

引用元:https://event.nbacademy.jp/asiakoshien2025
アジア甲子園は、これまで野球があまり馴染みのなかった東南アジア地域を中心に、野球を通じた人間形成と国際交流の場を提供し、現地の国に貢献できる大きな意義を持っています。
次なるターゲットはアフリカ
SNSを活用した普及
野球のグローバル化の波は、これまで「野球不毛の地」とされてきたアフリカ大陸にも押し寄せています。
その象徴的な存在が、ウガンダ出身の捕手、カスンバ・デニス選手です。
彼は、レンガや生卵を使った独特な練習風景をSNSに投稿し、そのひたむきな姿が世界中で話題となりました。

引用元:https://www.afpbb.com/articles/-/3466667
今や世界的な大スターである、大谷翔平選手も彼のSNSをフォローし、その才能に注目しています。
カスンバ選手は、日本の独立リーグで腕を磨くなど、着実にプロへの道を歩んでいます。
NPBとアフリカ野球
さらに、日本のプロ野球界もアフリカへの関心を強めています。

引用元:https://www.nikkansports.com/premium/baseball/news/202602120000401.html
これは、NPB(日本野球機構)の球団として初めてのアフリカ出身選手との契約であり、歴史的な一歩と言えるでしょう。
これは、NPB(日本野球機構)の球団として初めてのアフリカ出身選手との契約であり、歴史的な一歩と言えるでしょう。
これらの動きの背景には、JICA(国際協力機構)などを通じた長年の野球振興事業があります。
日本は、野球の技術指導だけでなく、用具の提供や指導者の育成など、多角的な支援を通じてアフリカでの野球の種まきを続けてきました。その努力が、今まさに実を結び始めているのです。
まとめ
「野球は日米だけのスポーツ」という認識は、もはや過去のものとなりつつあります。2023年のWBCでのチェコ代表の躍進、元ロッテ荻野貴司選手のチェコリーグ挑戦、アジア甲子園を通じた日本の高校野球文化の輸出、そしてアフリカ大陸からNPB入りを果たす選手たちの登場――これらは全て、野球が着実にグローバルスポーツへと進化している証です。
もちろん、サッカーのような圧倒的な普及度にはまだ及びません。
もちろん、サッカーのような圧倒的な普及度にはまだ及びません。
しかし、日本やアメリカ、そしてMLBやNPBといった野球界の主要組織は、単に競技を広めるだけでなく、野球という文化を世界に根付かせようと、様々な取り組みを進めています。
2026年のWBCは、こうした努力がどこまで実を結んでいるのかを示す、重要な試金石となるでしょう。
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