スポーツ業界、業界地図「スポーツベンチャー」編!

かつて、日本におけるスポーツは教育や心身の鍛錬といった側面が強く、お金を稼ぐこと、つまりビジネスに結びつけることはどこかタブー視される風潮さえありました。
しかし、その景色は2020年の東京オリンピック・パラリンピック誘致を契機として、劇的に変わりつつあります。

スポーツ庁は、2012年に約5.5兆円だったスポーツ産業の市場規模を、2025年までに15兆円規模へと拡大させるという壮大な目標を掲げました。
新型コロナウイルスの影響により、2020年以降の市場は縮小してしまいましたが、2025年の市場規模は8.4兆円〜12.1兆円程度に回復すると推計されています。

このスポーツの産業化という流れの中で、スポーツは単なる興奮や感動の対象ではなく、地域を活性化し、莫大な付加価値を生む成長産業として再考され始めたのです。

なぜ今、スポーツベンチャーなのか?

これまでのスポーツ業界を支えてきたのは、主にプロチーム、大手用品メーカー、あるいは大規模な施設運営会社でした。
しかし、2010年代後半からのデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを受け、その構造は細分化されています。
今のスポーツ業界の勢いを作っている主役は、彼らだけではありません。

ここで注目したいのがスポーツベンチャーの存在です。

ここでのスポーツベンチャーとは、既存のチーム運営や用具製造といった伝統的な形に縛られず、独自のテクノロジーや斬新なビジネスモデルを用いて、スポーツの課題を解決したり、新しい楽しみ方を創り出したりする企業のことです。

デジタル化という追い風が、その勢いを加速させています。
スマートフォンの普及、ビッグデータ、AI、VR(仮想現実)といった技術が、従来にないサービスを実現し、これまで埋もれていたスポーツの価値を掘り起こしています。

様々な分野で頭角を現しているスポーツベンチャー企業がある一方、その知名度はチームやメーカーに比べると劣っており、なかなか全貌を理解するのは難しいです。
そこで今回のコラムではスポーツベンチャー企業を分野ごとに細分化した上で、各社の特徴を見ていき業界分析を行っていこうと思います。

パフォーマンス・データ分析

かつてプロチームやナショナルチームしか利用できなかった高度なトラッキング技術や映像分析システムが、スマートフォンの進化とSaaSモデルの普及により、アマチュアチームや学校部活動でも利用可能となっています。

またトップレベルの競技環境では、より莫大な量のデータ分析が可能となっています。
そのため従来よりも、選手個人に焦点を当てたデータ利用が進み、選手のパフォーマンス向上に役立てられています。

この章では、パフォーマンスやデータ分析技術を強みとしている4社を取り上げていきます。

株式会社SPLYZA

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000012922.html

株式会社SPLYZAはアマチュアスポーツマンの「もっと上手くなりたい」を叶えるというスローガンを掲げ、2011年に設立された会社です。

代表の土井寛之氏は、自身もウィンドサーフィンやスノーボードを愛好するスポーツマンであり、選手や学生が課題を自ら発見し解決する「考える力」の大切さを説いています。

「SPLYZA Teams」や「SPLYZA Motion」など、高価な機材を必要とせず、スマートフォン一つで高度な戦術や動作の分析を可能にしたサービスを提供しています。
「SPLYZA Teams」は高校サッカーチームを中心に導入が進み、現在は、約900チームで導入が進んでいます。

現在はAIによる動作解析技術で得た知見を活かし、ヘルスケア領域への活用を進めています。
会社HP:https://www.splyza.com/

RUN.EDGE株式会社

引用元:https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/2022-run-edge/

株式会社RUN.EDGEは「『シーン』で社会活動をアップデートする」をミッションに掲げ、2018年に設立された、映像分析技術で、新しい体験・文化を創っていくスポーツテックカンパニーです。

代表の小口淳氏は富士通出身のエンジニアで、2014年に社内でスポーツビジネスプロジェクトを立ち上げ、プロ野球向けサービスの事業化に成功しました。
しかし、変化の激しいスポーツ界でスピード感を持って事業展開するため、2018年に富士通からのスピンオフという形でRUN.EDGEを設立しました。

「PITCHBASE」という、プロ野球向けの映像検索・分析プラットフォームを提供しており、プロの厳しい要求基準を満たす即時性と検索性が売りです。
多くのNPB球団で採用され、スカウティングやスコアラー業務のスタンダードとなっています。

近年では「FL-UX」と呼ばれる、サッカーやバスケ向けのサービスにも力を入れており、大企業の技術力とスタートアップの機動力を兼ね備えた珍しい会社となっています。
会社HP:https://www.run-edge.com/

株式会社Sportip

引用元:https://pbm555.com/blog/12409

株式会社Sportipは「全ての人へ可能性を最大化する指導を届ける」ことをミッションに掲げ2018年に設立された筑波大学発のベンチャー企業です。
代表の髙久侑也氏は野球選手として活動していた際、先天的な疾患である胸郭出口症候群に苦しみ、選手生命を断念せざるを得なかった原体験をもち、「怪我で夢を諦める人をゼロにしたい」という強い想いから、筑波大学卒業後に株式会社Sportipを創業しました。

「Sportip Pro」と呼ばれる、スマートフォンやタブレットのカメラで撮影したモーションキャプチャーをもとに、AIによる姿勢分析・動作分析を行うトレーニング効果向上アプリと、「リハケア」という、AIに取る身体分析から介護プランを自動生成する介護支援アプリを運営しています。

スマートフォン・タブレットで撮影するだけで、個人の身体特性やバランス、動きをデータ化し、適切な提案を行う技術は、世界最高レベルと称され、世界からも注目を集めています。
会社HP:https://www.sportip.jp/

株式会社Knowhere

引用元:https://bravodesign.co.jp/portfolio/baseballlab/

株式会社Knowhereは「誰もがスポーツを上手くなれる環境を」をミッションに掲げ2020年に設立されたスポーツ分野でのテクノロジー活用を推進する会社です。
代表の伊藤久史氏は慶應義塾大学卒業後、DeNA、将棋AIで有名なHEROZを経て起業したエンジニア経営者で、モバイルアプリ開発とAI実装の知見をスポーツに応用しています。

リアルな場所と、デジタル技術の両輪で事業を展開していることが特徴です。
「外苑前野球ジム」には、ラプソードなどプロ仕様の最新機器が供えられ、都内の一等地で24時間利用可能な場所となっています。
単なるジムとしてだけではなく、自社開発技術の実証実験場としても活用されています。

また、「SmartScout」という、スマホカメラだけで、投球の球速や回転数を計測できるAIアプリの開発を千葉ロッテマリーンズと共同で行っています。

元プロ野球選手の斎藤佑樹氏も投資家として参画しており、業界内外からの注目度が高いです。
会社HP:https://knowhere.co.jp/

ファンエンゲージメント分野

従来のスポーツ観戦は、マスメディアを通じた受動的なものが主流でしたが、SNSの普及により、ファンとチームの関係性は双方向の形へ劇的な進化を遂げています 。

単に試合を観るだけでなく、デジタル上でのリアルタイムな応援やギフティング(投げ銭)、さらにはデジタルトレーディングカードを通じた「ファンであることの資産化」といった、新たな熱狂の形が生まれています 。
また、この波はプロスポーツに留まらず、これまで光が当たりにくかったアマチュアスポーツや学生スポーツにおいても、ファンとコミュニティを強固に結びつける手段として機能し始めています 。

この章では、テクノロジーの力でファンの熱量を最大化し、スポーツの新たな価値を創出している3社を取り上げます。

株式会社ookami


引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000674.000013627.html

株式会社ookamiは「この世界にスポーツダイバーシティーを」をミッションに掲げ、2014年に設立された会社です。
代表の尾形太陽氏はソフトバンクアカデミアの出身であり、若手起業家として注目された存在でもあります。

スポーツにメジャーやマイナーは関係ないという考えのもと、誰もが自分の好きなマイスポーツをつくり、応援できて夢中になれる世界を追求するサービスを提供しています。
2016年にグッドデザイン賞を受賞した、「Player!APP」は、マイナースポーツや部活の試合なども含めた試合情報を提供するアプリです。

メンバーシップや、寄付などを通じたチーム強化や、ファン獲得に向けたデジタルマーケティング・広報のサポートも行いチームの公式サイト・アプリを構築するサービスを提供し、チームとファンを繋ぐ役割を担っています。
会社HP:https://ookami.tokyo/

株式会社Ventus

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000033437.html

株式会社Ventusは「全てのファンが、自分の好きに誇りを持てる世界をつくる。」をミッションに掲げ2017年に設立された、テクノロジーとクリエイティブの力で、スポーツとエンタメ領域で新しい価値を作り続けるスタートアップ企業です。

代表の梅澤優太氏は、東京大学在学時に友人と電子トレカ事業の構想を描き、起業しました。

現在では電子トレカコレックションサービス「ORICAL」はNPB8球団や、日本相撲協会などの公式サービスとして利用されており、球団に新たなライセンス収益をもたらしています。
会社HP:https://ventus-inc.com/page

エンゲート株式会社

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000035012.html

エンゲート株式会社は、「スポーツの世界をテクノロジーが変える」をミッションに掲げ、2018年に設立されました。
代表の城戸幸一郎氏は、大学法卒業後、ソフトバンクを経て楽天に入社し執行役員などを歴任したビジネスエリートです。

高校の親友であるセーリングの北京五輪代表 石橋顕選手が出場のための資金集めに悪戦苦闘し、同級生みんなでTシャツ購入した際に、資金集めの手段が少ないために夢を諦めたアスリートが多くいるのではと考えたことが、起業の起点となりました。

ファンがチームや選手に対し、デジタルギフト(投げ銭)を贈ることで直接支援できるWebサービス「Engate」を運営しており、才能もやる気もあるが、資金が足りないチームや個人を、個人が支援する仕組みを構築しています。

ギフティングと、リワード(お返し)により、ファンとのエンゲージメントを高める新たなツールになることが期待されています。
会社HP:https://engate.co.jp/

スポーツマーケティング分野

日本のスポーツ界でも、ビジネス的な観点が求められるようになってきた中で、経営の近代化と収益構造の多角化は大きな課題となっています 。
かつての企業の福利厚生や補助金依存の体質から脱却し、自立した産業へと変化するためには、戦略的なマーケティングが欠かせません 。

現在は、デジタルマーケティングによるチケッティングの最適化、デザイン経営によるブランド価値の再構築、さらには地方チームに特化したスポンサー獲得支援など、高度な専門性を持ったパートナーがチームの稼ぐ力を支えています 。

この章では、単なるアドバイスに留まらず、戦略立案から現場運営まで一貫して支援し実行に移す、スポーツビジネスの変革をリードする3社を紹介します。

株式会社ジョインハンズスポーツ

引用元:https://joinhands-s.jp/

株式会社ジョインハンズスポーツは、「スポーツのチカラで幸せになる人を増やす」ことをミッションに掲げ、2014年に設立された会社です。

代表の小林亮文氏は、新卒でスポーツ業界に入社しました。
その後、単身で渡米して本場のスポーツマーケティングを学び、帰国後会社を立ち上げた、スポーツ業界に精通した人物です。

スポーツ業界の「信頼度日本一」課題解決カンパニーを目指しており、競技を限定せずスポーツチームや協会のサポートを行っています。
スポーツビジネスに付きまとう、人手不足やノウハウ不足などの課題に対し、組織内部からサポートしていることが特徴です。

FC東京の冠試合運営や、埼玉西武ライオンズの集客施策などを、企画段階から当日の現場運営までを一貫して手掛けています。
また、スポーツ業界に興味のある学生に情報を提供するため、「PROSPO」という自社メディアの運用をしており、インターン情報の掲載などが行われています。
会社HP:https://joinhands-s.jp/

株式会社ase

引用元:https://www.ase-inc.jp/

株式会社aseは「デザインの力でスポーツ産業を進化させる」ことをビジョンに掲げ、2018年に設立された、スポーツビジネスとデザインマネジメントの融合に秀でた会社です。
代表の、熊本浩志氏は、東芝で家具部門のデザインを担った経歴があり、現在はデザイナーとして活躍する傍ら、東京ヴェルディの野球部門東京ヴェルディ・バンバータのGMとしての顔を持ち合わせるスポーツに造詣の深い人物です。

かつての名門野球用品ブランド「Ben General」を現代的なデザインで復活させるなど、ブランドリバイバルを展開しています。
また、「COLLEGE MARKET」という、大学の部活動のECプラットフォームの運営を行い、グッズ製作などの観点から大学スポーツのマーチャンダイジングやブランド化を推進しています。

千葉ロッテなどのプロチームのユニフォームデザインの制作も請け負っており、高いデザイン能力でスポーツチームのブランド力向上に取り組んでいます。
会社HP:https://www.ase-inc.jp/

プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社

引用元:https://youtrust.jp/companies/193277ffc05ccd3330b6cd1104752b25

プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社は、「日本のスポーツ全会場を満員にする」というミッションのもとで、スポーツに関わる全ての人がハッピーになることを目指し活動している、2016年に設立された会社です。

代表の平松大樹氏は、元バスケ選手で、渡米しプロを目指したものの挫折し、WEB業界を経てスポーツマーケティング業界で会社を立ち上げた異例の経歴を持っている方です。

クリエイティブに強く、動画制作、ウェブ・グッズなどのデザイン業務から、SNS運用までスポーツチームのマーケティングを一手に引き受ける会社として高い評価を得ています。
ファンの方はもちろん、新規の方も含めた幅広い層にクラブの魅力が伝わるようなデザインのHPやビジュアルを作成し、チームのブランド力向上を図っています。

読売ジャイアンツやセレッソ大阪など多くのプロスポーツチームの収益向上に向けたマーケティング活動支援を行っており、観客動員数の増加やスポンサー獲得などの成果を上げています。

近年では、部活動地域展開支援サービス「ブカツプラス」の提供を始めており、プロスポーツクラブにおける様々事例から得たノウハウを、民間の立場からの部活動改革に活かしています。
会社HP:https://www.plusclass-sports-incubation.co.jp/

キャリア・人材分野

スポーツ産業が15兆円規模の成長産業へと飛躍するためには、その土台を支える人材が不可欠です 。
AIやDXが加速する現代において、アスリートが競技を通じて培った強いメンタルやチームワークといった人間力は、ビジネスの世界でも極めて高い価値を持つようになっています 。

また、大学等の研究機関が持つ知見をビジネスに変換するアカデミアの動きや、異業種・海外スタートアップを繋ぐコミュニティの形成も、イノベーションの起点となっています 。

この章では、アスリートのセカンドキャリア支援や人材育成、そして業界全体の連携を促す役割を担う企業やプロジェクトに焦点を当てます。

株式会社Acial Design

引用元:https://news.8mato.jp/article/b110a6ec-4b18-11f0-942f-9ca3ba0a67df#gsc.tab=0

株式会社Acial Designは、「& Sports. More Human.」を掲げ人間の進化をスポーツで実装することを目指し2014年に設立された会社です。
スポーツとビジネスコンテンツを掛け算し、スポーツのチカラで人の可能性を広げ、世の中を改善する事業を創造しています。

代表の小園翔太氏は、学生時代プロテニスプレーヤーを目指していましたが、目の病気で断念した過去があります。
そのような原体験が元となり、アスリートのセカンドキャリア支援を行いたいと、この会社を立ち上げました。

小園氏は、逆境に立ち向かい、仲間とともに挑み続ける力や、その過程で生まれる絆は人間にしか持てない力と考え、スポーツを「人生を豊かにデザインするツール(教育)」として再定義しました。
「人を育てる力」としてのスポーツの重要性にいち早く着目したところに特徴があります。

「Sports Force」というブランドを運営しており、スポーツ人材にプログラミング教育を施し、IT企業やプロジェクトとマッチングするサービスや、スポーツ人材に特化したキャリア支援プラットフォーム、中学・高校の部活動の指導員として人材を派遣するサービスなどを行っています。
会社HP:https://acial.co.jp/

株式会社Sports Tech Japan

Baselink AI
引用元:https://baselinkai.com/

株式会社Sports Tech Japanは「Sports×Technologyでスポーツ業界の未来を創る」をミッションに2022年に設立されました。
テクノロジーの力でスポーツ界に革新をもたらし、世界中のアスリートとファンに新たな価値を提供することを目指しています。

代表の金澤賢人氏は、幼少期から野球経験がありスポーツのすばらしさを実感する一方、地域による指導格差などの課題を感じていたため会社を設立しました。

「Baselink AI」という野球特化型SNSアプリを開発し、指導者と選手のオンライン上でのやり取りやAIによる分析を通した指導を可能にして課題解決に取り組んでいます。
その他にも映像精製技術や、優秀なエンジニアを抱えており、受託開発などを行っています。
会社HP:https://sportstechjapan.com/

まとめ

今回のコラムでは、スポーツベンチャー企業について紹介していきました。
ここでは紹介しきれなかった企業も含め、スポーツ業界には多種多様なことに取り組む、個性豊かな企業がたくさんあります。

これを機に興味を持たれた方は、興味分野について、自分なりに調べてみてください。

また、PROSPOでは今回紹介した企業も含めスポーツ業界のインターン情報や、新卒採用情報をたくさん掲載しています。
是非ご覧ください!



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