日本とは全然違う?海外の就職活動事情とは

グローバル化が進む現代において、日本の若者の間でも「海外で働く」という選択肢が現実味を帯びてきています。
海外の大学を卒業した日本人や、ワーキングホリデーやインターンを経て現地就職を目指す人も増えており、その関心は高まる一方です。
しかし、海外での就職活動は、日本とは大きく異なる点が多く、その実態を把握しておくことが不可欠です。
本コラムでは主要な国々を中心に、海外の就職活動事情を解説します。
また、共通点やトレンド、各国独自の慣習などにも触れ、海外就職を目指す人々にとっての参考になれば幸いです。
海外の就職活動における日本との違い
①通年採用が主流
多くの海外の国では、日本のような「新卒一括採用」は存在しません。
採用は基本的に通年で行われ、企業の求人が出るタイミングで応募を行います。
このため、学生は自らの卒業時期や希望するキャリアに合わせて、柔軟に就活を始めることができます。
②ジョブ型雇用と職務記述書
海外企業では、「ジョブ型雇用」が一般的です。
これはあらかじめ職務記述書(「Job Description」「JD」と言われるもの)が定められており、その職務にふさわしいスキル・経験を持った人材を採用するという考え方です。
職務内容と成果が明確に定義されており、日本のような「ポテンシャル採用(人物重視)」とは大きく異なります。
③履歴書(レジュメ・CV)とカバーレター
履歴書も日本とは大きく異なります。
海外では「レジュメ(Resume)」または「CV(Curriculum Vitae)」と呼ばれるものが使われ、顔写真や生年月日、性別などの個人情報は通常記載しません。
実績やスキルが中心で、カバーレター(志望動機を述べる文書)を添えて応募するのが一般的です。
各国の就職活動事情とは
アメリカの場合
アメリカは非常に競争が激しい市場でありながら、スキルベースの採用が明確な国でもあります。
大学のキャリアセンターを活用し、インターンを経験してからフルタイムの職に就くのが一般的な流れです。
企業の採用活動は、卒業の半年〜1年前から始まることが多く、特に外資系コンサルティングやテック企業は早期に選考を開始します。
<特徴>
- LinkedInの活用が必須
- ネットワーキング(リファレンス)の重要性
- 面接は複数回、オンラインと対面の併用
- OPT(Optional Practical Training)やH-1Bビザが必要
イギリスの場合
イギリスもアメリカと同様、インターンシップを経てフルタイム職へと進む流れが主流です。
企業によっては「Graduate Scheme(新卒向けの育成プログラム)」を設けており、比較的日本の新卒一括採用に近い要素も見られます。
<特徴>
- CVとパーソナルステートメント(自己紹介文)の提出
- 一次選考にオンラインテスト(性格診断・論理問題)
- インターンシップからの登用が多い
- 就労ビザ取得はEU離脱後やや厳格に
ドイツの場合
ドイツは職業訓練や技術教育が盛んな国であり、大学在学中の実務経験(インターンや職業訓練)が重視されます。
特にエンジニアや製造業、IT分野では職能評価が明確です。
<特徴>
- 職務経歴とスキルが重視される
- 応募書類に「Zeugnis(成績証明書や推薦状)」を添付
- カバーレターは非常に丁寧に書かれる傾向
- 労働許可証はブルーカード(EU Blue Card)で対応可能
フランスの場合
フランスの就職活動では、ネットワークの力が非常に強く働く社会です。
ビジネススクールや大学のOB・OGのつながりが就職に大きな影響を与える場合があります。
<特徴>
- インターン必須、2〜6か月間が一般的
- CVは1ページで簡潔に
- カバーレターも簡潔ながら個別最適化が重要
- 高等教育機関(グランゼコール)出身者が有利な傾向
シンガポールの場合
アジアのハブとして機能しているシンガポールでは、外資系企業が多く、英語での応募・面接が標準です。
多国籍人材が働いており、ビザ取得も比較的寛容な部類です。
<特徴>
- ジョブポータル(JobStreet、LinkedIn)が活発
- 賃金水準は比較的高い
- 日本人も多く、日系企業での現地採用も多い
- 労働ビザ(Employment Pass)取得が比較的簡単
オーストラリアの場合
ワーキングホリデーや語学留学から就職に移行する人も多いオーストラリア。
職歴よりも人物重視の側面もあり、フレンドリーな雰囲気の中で就活が進みます。
<特徴>
- 企業文化はフラットでカジュアル
- 応募書類はCVとカバーレター
- ネットワーキングが鍵(カフェやMeetupイベントなど)
- Skilled Migration制度(技術移民)を活用した就労ビザ取得が可能
就職活動における共通要素と注意点
ネットワーキングの重要性
海外では「知り合いの紹介」や「リファレンス(推薦状)」が極めて重要です。
特にアメリカでは80%以上の求人が非公開求人(hidden job market)とされ、ネットワーク経由の情報が就職の鍵を握ります。
オンラインポートフォリオ・LinkedInの活用
履歴書だけでなく、オンライン上で自分のスキルや実績を見せることも重要です。
特にクリエイティブ職やエンジニア、マーケターなどでは、GitHubやBehance、個人Webサイトなどで成果物を公開していると評価が高くなります。
ビザと労働許可の確認
どの国でも、外国人が働くにはビザが必要です。
就職活動と並行して、労働許可の要件、取得の手順、雇用主のサポートの有無を確認する必要があります。
企業がビザスポンサーになってくれるかどうかは非常に大きなポイントです。
海外就職を目指す人へ
語学力はツールと捉える
英語力(あるいは現地語力)は当然必要ですが、それ以上に「現地の働き方や価値観」を理解する姿勢が問われます。
語学は目的ではなく手段であり、ビジネス現場でどれだけ意思疎通ができるかが評価されます。
自分の「強み」を明確に
ジョブ型雇用では、「自分がこのポジションにどんな価値を提供できるか」が求められます。
専門スキルやこれまでの実績を言語化し、自信を持ってアピールできるようにしておきましょう。
小さな経験も活かす
アルバイト、ボランティア、留学中のプロジェクトなども「成果」としてまとめておくと、海外の採用担当者には高く評価されることがあります。
数値や事例を交えて説明することがポイントです。
今後のトレンド
今後、海外の就職活動のトレンドとしては以下が挙げられます。①リモートワーク普及
国境を越えた働き方が一般化しつつあり、国にとらわれずスキルで働く時代へ。
②AIやIT系職種の需要拡大
ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、データサイエンスなどは世界中で求人が活発。
③サステナビリティと多様性(DEI)重視
企業文化として社会的責任や働き方の柔軟性が重視されている。
まとめ
いかがでしたでしょうか。海外での就職活動は、日本と比べて「個人のスキルと実績」「ネットワーク」「タイミング」が極めて重要な世界です。
難しさもありますが、透明性や柔軟性が高く、挑戦する価値は十分にあります。
現地の情報をよく収集し、自分のキャリアを主体的に切り開いていくことが成功の鍵です。
現地の情報をよく収集し、自分のキャリアを主体的に切り開いていくことが成功の鍵です。
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