【公設?民設?】最新スポーツアリーナの建設・運営形態に迫る!
近年多くのスポーツアリーナが新設されていることはご存じでしょうか。 新設されたスポーツアリーナは、これまでのスポーツアリーナと違いそれぞれの特徴を持っています。 今回は、新設されたスポーツアリーナと今までのスポーツアリーナの違いを、建設・運営の観点から解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
今までのスポーツアリーナ
公設公営
今までのスポーツアリーナの多くは、市民体育館に代表されるような公設公営の施設でした。公設公営とは、資金調達から設計、建設、運営まですべて公共(=国や自治体)がおこなう形式のことを指します。
こういった公設公営のスポーツアリーナは、地域住民の運動の場や体育教育の場として多くの人に利用され、愛されてきました。
しかし、公設公営のスポーツアリーナにはいくつか欠点が存在します。
1つ目は、施設の老朽化が進んでいるという点です。
多くの市民体育館が建設されてから大分時間が経っていますが、古くなった部分やバリアフリーに未対応な施設を建て替え・改修するには費用がかかります。
また、近年気候変動における大規模な災害が増えています。古い公設公営の施設では、災害に対応できる設備が備わっていない可能性が高いです。
2つ目は、収益性の低さです。公設公営の施設を運営する国や自治体が優先的に考えなければならないことは、市民へ安定した行政サービスを提供することであるため、利益を生むことは二の次になってしまいます。結果として、公設公営のスポーツアリーナは利益を生み出す意識が低いとされ、「ハコモノ」と揶揄されることもありました。
このように、公設公営のスポーツアリーナには問題点があります。そのため、以上の問題点を解決するような、新しい形の運営形態が近年注目されています。それは、公共と民間が連携した、官民連携の施設です。
エディオンピースウイング広島
公設民営
エディオンピース広島は、公設民営の施設です。
公設民営の施設とは、資金調達から設計・建設を公共が、運営を民間がおこなう、もしくは資金調達を公共が、設計・建設から運営を民間がおこなう施設のことです。
ピースウイング広島は、広島市が建設し、サンフレッチェ広島が指定管理者として管理・運営をおこなっています。
設計や運営を民間に任せることで、公設公営のスポーツアリーナと比べてスポーツアリーナのコンセプトの自由度が高まったり、試合日以外にも運営を行うことができるため収益性を高めたりすることができます。
特徴
①まちなかスタジアム
エディオンパーク広島は、「まちなかスタジアム」だと言われています。
広島城に隣接し、原爆ドームからも歩いて10分と観光名所が近く、日本初の都心交流型スタジアムパークとして建設されました。
(引用:https://bunganet.tokyo/edion/)
スタジアムの端に穴が空いており、スタジアム内の雰囲気が外から見える、逆に言うとスタジアム内から外の景色を見ることができます。つまり、試合を観戦しているときでも、「まちなか」にいるということを忘れさせない造りになっているのです。
②HiroPa(公園)
HiroPaは、スタジアムに隣接した公園です。
飲食店などの商業施設が充実しているほか、公園をより楽しむためのアイテムのレンタルサービスやウォーターアクティビティの体験施設があります。
したがって、サッカーの試合がない日でもスタジアム周りが365日賑わうような施設になっています。
③防災拠点としての役割
スタジアムと公園を総称して「ひろしまスタジアムパーク」と呼んでいます。
ひろしまスタジアムパークは、街の大事な防災拠点としての役割も持ち合わせています。
スタジアム内には約600平方メートルの倉庫があり、食料や生活品等が備蓄されています。また、もし大規模な災害が起きて交通インフラなどが止まってしまった場合、一時待機することができる「帰宅困難者一時待機場所」として指定されることになっています。
そのほかにも、土砂災害や地震、津波などに対応した指定避難場所に制定されています。
(参考:https://news.ntv.co.jp/n/htv/category/society/hte145b61379b74241a4a2abd512d5ea8f)
(引用:https://www.hiroshima-stadiumpark.jp/bousai/)
公園には、災害時には仮設トイレを設置できる「マンホールトイレ」や、座面を取り外すことでかまどとして炊き出しなどをおこなえる「かまどベンチ」があります。
ピーススタジアム長崎
民設民営
ピーススタジアムとその周辺の施設を含めて「長崎スタジアムシティ」と呼称します。長崎スタジアムシティは民設民営の施設です。
民設民営の施設は、資金調達から設計・建設、運営をすべて民間がおこないます。民間が資金を調達するため、公設公営や公設民営の施設に比べて巨額の資金をスポーツアリーナ建設に投資することができるようになります。
長崎スタジアムシティは、ジャパネットグループがおよそ1,000億円投資して建設しました。
投資分の回収には25年〜30年かかる見込みですが、運営を工夫することで収益の増加が見込まれ、回収にかかる年月を前倒しにすることも可能だと言います。
これは、民間が資金調達し、民間が運営するからこそできるハイリスクなスポーツアリーナの運営ということができるでしょう。
特徴
①複合型な超巨大施設であること
ピーススタジアム長崎は、「長崎スタジアムシティ」という超巨大複合施設の一部です。長崎スタジアムシティにはピーススタジアムの他に、ハピネスアリーナ、ホテル、商業施設、オフィスが集まっています。
(引用:https://www.nagasakistadiumcity.com/news/20230428-2/)
②試合がない日もスタンドを解放
ピーススタジアムでは試合がない日にもスタンドを開放しており、公園感覚で寄ることができます。また、商業施設や飲食店が空いているため、一年中楽しめる施設になっています。よって、試合がない日にも人が訪れる、収益性の高い施設になっています。
③ジャパネットグループがスタジアムシティに込めた思い
ジャパネットグループは、通信販売事業に並ぶ二つ目の柱としてスポーツ・地域創生事業に取り組んでおり、長崎出身の企業であることから地元を活性化したいという想いに至り、長崎スタジアムシティプロジェクトの実施を決めました。
ジャパネットグループは、長崎に遊びに行きたい、長崎で暮らしたい・働きたいという人を増やし、長崎という町が誇り溢れる場所になるようにという思いを長崎スタジアムシティに込めています。
長崎スタジアムシティについてもっと詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。→https://prospo.jp/column_detail/?id=450
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、公設公営・公設民営・民設民営のスポーツアリーナの違いについて解説していきました。
公設公営に比べて公設民営・民設民営のスポーツアリーナは、規模が大きく収益性の高い施設となっています。
今後も発展していくスポーツ産業において、スポーツアリーナは大きな影響力を持っています。したがって、スポーツアリーナの建設・運営形態の選択は重要視されるでしょう。
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